医師を対象にした医療安全研修会の紹介

(財)倉敷中央病院 安全管理室担当、GRM 米井昭智

 病院で医療安全を確保するにはリーダーが活動の先頭になることが第一に重要である。倉敷中央病院(倉中)では2001年 から医師の医療安全への動機付けを高める目的で1泊2日の研修会(WS)を行っている。私は責任者として当初から運営に関わっており、本稿ではWSの内容 について紹介する。

 WSの目的は、「医療事故は身近にあることを知り、事故防止行動への意識を高める」とし、すべての医師が例外なく参加する。2009年末までに23回開 催しており、500名以上の医師が参加している。一回の参加者は25名程度で、4つのグループに分かれて小グループ討論(SGD)と小グループ討論 (SGD)を繰り返すWS形式で、プログラムは完全に倉中オリジナルである。

 プログラムは、セッション1:ロールプレイ、セッション2:事例の根本分析(RCA)、セッション3:危険予知訓練、である。各セッションの間に3~4 の講義があり、セッション終了毎にアンケートがある。アンケート結果は2週間以内にすべての参加者にフィードバックする。

 セッション1は明確な過誤事例直後に担当医と指導医が家族に説明する場面のロールプレイを行う。小グループ討論(SGD)でロールプレイのビデオをプレイ バックして議論し、小グループ討論(SGD)で発表する。セッション2は、倉中の警鐘的事例を検討し原因分析と再発防止策を議論する。「エラーは原因では なく結果である」という考え、システム上の問題点を議論することが重要である。セッション3では、日常の危険な写真などを見せて、危険予知訓練を行う。こ のセッションはインストラクターの力量が問われるが、うまく行けば参加者が楽しむことができる。(写真は全員で指差し唱和をしている様子)

 WSを経験した外科系医師はタイムアウトを率先して行うようになるので、医師に対して動機付けを高める効果はあると思われる。医師同士のコミュニケーショ ンを改善させる効果もあるかもしれない。WSが続いている理由としては、①病院長の強いリーダーシップがあり、病院長と事務長は最初から最後まで参加す る、②安全活動を積極的に推進しようとする複数の医師、コメディカルがいる、③安全管理室長は企業の開発部長をしていた人物で、管理室の能力が高い、こと などが考えられる。研修会を続ける中で次世代のリーダーが育ってくることを願っている。

(2010-1-28)