当院は、看護学科(正看護師養成、修業3年、80人×3学年=240人)、助産学科(助産師養成、修業1年、20人)の付属看護専門学校(亀田医療技術専門学校)を有している。看護学校の実習先は、「最新のテクノロジー」と「患者第一主義」をポリシーに掲げ医療への取り組みを行っている診療科31科、病床数1000床の亀田メディカルセンターである。付属看護学校からの資格取得後の就職率は90%である。看護学校のME機器の講義・実習は2年生の臨床実習中に行っている。講義・実習のポイントは以下である。
・学生の大半が就職する病院で使用している医療機器を用いての実習と説明(人工呼吸器、輸液ポンプ、シリンジポンプ、SPO2モニタなど)
・実際に病院で起きたME機器のトラブルに対応している臨床工学技士が説明
・人工呼吸器実習では実際にマスクにて人工換気の体験と設定(強制換気、PSV、PEEP、トリガーなどを体験し、効果や注意事項を学ぶ)
・人工呼吸器を安全に使用するための併用機器の説明(SPO2モニタ、ETCO2モニタ、加温加湿器など)
・酸素解離曲線の説明(SPO2・ETCO2モニタを使いこなすための)
・重要なアラームの原因と対策を理解(人工呼吸器の過剰圧、低吸気圧、低1回換気量や輸液ポンプの気泡混入、閉塞圧など)
・過去の医療事故などを含め安全性を説明(医療ガス誤吸入・誤接続、高気圧酸素装置の爆発)
・患者の生命、医療従事者の生命を脅かす内容を理解(除細動器の通電時の厳禁事項、高気圧酸素治療における厳禁事項、ペースメーカにおける厳禁事項、加温加湿器と人工鼻の併用厳禁など)
医療機器のプロフェッショナルである臨床工学技士が、現状と問題点、過去の事例、医療事故を踏まえ説明することには意義があり、人工呼吸器、輸液ポンプなどの機器の基本を理解することは重要である。しかし、この知識だけで取扱いができることにはならない。機種ごとの取扱い説明が必要と考える。高度な医療提供と医療事故は隣り合わせであることを学生時より認識を持つようにすることは大変重要であり、有益であると考える。インシデント、アクシデント、ヒヤリハットは、報告する習慣を根付かせる時期から報告内容の調査、対策、対策効果の検証をし、いかに対策効果が得られるかを求められるところまで医療従事者の意識が向上してきている。
亀田メディカルセンターでは、組織的、体系的な一貫した卒後教育システムにより、経験の浅い医師、看護師、技師が1日も早くプロフェッショナルとなるようフォローしている。卒後教育は医療機器の取り扱い説明、安全講義を含めた内容であり、医療安全教育講演を職員全員が必須で受講しなければならない。シュミレーションセンターは、24時間利用可能で、気軽に臨床で実際に使用している機器を取り扱うことが可能である。
また、リスクマネージャの養成も積極的に行い、部署には複数のリスクマネージャが存在し、リスクマネージャを中心に安全対策委員会を開催し活動していることが職員全体の意識向上に繋がっていると考える。これは、身近に起きているインシデント、アクシデント、ヒヤリハット報告の共通認識をし、同職種間で起きているインシデントなどに、安全対策を立て運用することが身近な活動となっている。これまでは、上司が安全対策を打ち立て、各スタッフに徹底する一方的な打ち出しであったが、現在は、スタッフによる医療安全対策に対してPDCAサイクルが確立しつつある。しかし、ME機器に関するインシデントは絶えず報告がある。内容は機器の取扱いに関する知識不足によるもの、経験不足が原因である。このような環境の中で、ME室では、看護教育の支援として新人看護師、指導看護師の教育から看護学生に対する医療機器の講義、実習を行っている。
(2010-7-14)