公益社団法人 日本医師会の活動
医療安全に関する日本医師会の活動について
本会の医療安全に関するさまざまな取り組みについては、これまで共同行動のフォーラム等で何度かご紹介してきたので、今回は会内委員会における直近の活動についてご報告する。
平成24・25年度の本会医療安全対策委員会では、会長からの諮問「成果が見える医療安全を目指して」を受けて、委員全員がそれぞれの地元で、地域の医師会を巻き込んだ事故防止活動に取り組んでいる。いくつか例を挙げる。
- 北海道医師会では無床診療所向けの院内感染対策マニュアル(試行版)を作成し配布した。その後、院内感染対策への取り組み意識がどのように変化したかを把握することを目的にアンケート調査を実施した。その結果、清掃、手指衛生関係はマニュアル配布前からよく出来ていたが、院内掲示、啓発活動、チェック体制等はあまりできていないことがわかった。最終的には診療所向けのマニュアルを作成することを目標としている。
- 岩手県医師会では無床診療所における医療安全管理と院内感染対策指針の徹底に取り組むことを目標とし、7月発行の"いわて医報"に「診療所(無床)医療安全管理指針」、「診療所院内感染対策指針」、「診療所院内感染対策のための標準的な予防策」等の関係書類の案内をした。また12月1日には共同行動と連携して「医療安全いわて公開フォーラム」を開催する。
- 埼玉県医師会では医療安全管理体制(医療安全・感染対策)についてアンケートを行い、医療機関の規模(有床・無床・病院)別にどのような傾向があるか、分析をおこなった。その結果、病床数と安全管理体制、病床数と医療事故紛争事例など、いくつかの項目で優位な相関がみられた。
- 愛知県医師会では、静脈採血と院内感染予防対策のチェックリストを作成し、会員への医療安全対策への注意喚起・啓発を試みた。これは平成23年度にも行っているため、25年度も同じチェックリストを使用して、注意喚起・啓発の効果を確認することとした。両年度とも、第一次調査、第二次調査と二回調査を行っている。そこで、第一次調査と第二次調査の比較、23年度実施機関と25年度初実施機関の比較等から得られた結果を分析した。残念ながら、23年度の第二次調査で改善されていたことが25年度には出来なくなっている項目もあり、継続的にチェックしていかなければ出来なくなるというデータが示されている。
- 兵庫県医師会ではインシデント・アクシデントレポートを収集したところ、相当数が集まり、さまざまな分析ができた。また健診センター診療所など、今まであまり見えなかったところの状況もわかってきた。
- 愛媛県医師会では静脈採血時の手技と事故に関する自己評価表を作成、配布し、どこまで実践できているか調査を行った。また、眼科医会を通じて白内障手術前のタイムアウトの実態調査も行った。集計結果については8月の医療安全講演会で発表している。同日は上原鳴夫先生に共同行動についての講演も行っていただいた。
- 大分県医師会では、予防接種の間違いは、たとえ健康被害はなくても医療全般に対する県民の信頼が損なわれかねないとの考えから、予防接種間違いの報告制度を作った。具体的には「予防接種安全対策管理報告実施要領」を作成し、「予防接種安全対策管理報告書」の様式を示した。
こうしたさまざまな地域の特性、医療規模の特性などを尊重しながら、医療安全に関する取り組みを各地で継続的していくための方策を検討することを目的に、平成26年1月19日に47都道府県医師会の医療安全担当理事等を対象とした「医療事故防止研修会」を予定している。当日は各委員が今期取り組んできた活動と成果を報告する。
最後に、医療安全全国共同行動が掲げている9つの目標の実現については、診療所にも広がるように、本会として今後も協力していく所存である。
(2013-11-22)