公益社団法人 日本診療放射線技師会の活動
医療被ばく低減施設の認定事業
経緯と目的
公益社団法人日本診療放射線技師会(以下、本会)は、1947年の日本放射線技師会としての創立以来、国民に向けて放射線の医学利用と放射線による身体影響の正しい知識の普及に関する啓発活動を行っている。
放射線被ばくは、放射線管理の視点から、①職業被ばく、②公衆被ばく、③医療被ばくの3つに分けられる。本会の進める医療被ばく低減施設認定事業では、医療被ばく低減のためには放射線機器管理の日常的実施、放射線施設の安全管理、放射線診療従事者の職業被ばくの低減を評価項目に加えている。それらの実践をとおして、職業被ばくと公衆被ばくに対して法令等で規定される線量限度が担保され、放射線機器の管理がなされてこそ医療被ばくの低減が達成されると考えている。
本会では、医療被ばく低減に向けた取組みとして、1996年に放射線機器管理士の認定を、1999年に放射線管理士の認定を開始した。2000年に医療被ばくガイドラインを会告し、放射線診療の進歩などに伴い2006年にその改訂を行い、「放射線量適正化のための医療被ばくガイドライン」を国民に提示した。具体的に、放射線量適正化を実施している施設を認定する医療被ばく低減施設認定事業は、2005年から2年間の試行を経て、現在40施設が認定されている。
認定審査の流れ
評価基準は、医療被ばく低減のための具体的な取り組みを提言し、病院や放射線部門に対し、医療被ばく低減のために何をすればよいかを具体的に示している。また、認定申請時に開始される自己評価調査票の作成過程や、訪問審査に向けた準備を進めることそのものが、医療被ばく低減の効果的な改善につながるものと考えている。
評価項目は2領域で構成され、第1領域は検査依頼の適切性や職員等への啓発、患者対応の適切性などを評価する「行為の正当化」、第2領域は検査・治療手順の明確化、検査線量の把握や医療被ばくガイドラインとの比較、被ばく低減に関する取り組みと恒常性、機器の保守管理、被ばく防護の適切性、法令の遵守などを評価する「放射線防護の最適化」である。
訪問審査は、複数名のサーベイヤーが受審施設を訪問して審査を行う。審査時には、施設内の各撮影室や操作室などで、患者案内や標識等の確認を行っている。審査後のサーベイヤーによる会議の結果、必須評価項目に対し"C評価"がなく、改善指摘事項がなければ訪問審査を合格としている。主な評価領域は、①医療被ばくガイドラインとの比較による最適化の確認に関すること、②患者の被ばく線量(検査部位別の組織・臓器線量の把握)のデータ評価である。
認定保留の場合は業務改善要望書が送付され、指摘事項の改善が認められた場合に医療被ばく低減施設として認定される。
今後の課題
書面審査・訪問審査から医療被ばく低減施設が少ない理由を考察すると、次のような理由が挙げられる。
- 検査別の組織・臓器線量が適切に評価されていない。
- IVR施行の患者ごとの皮膚線量が評価されていない。
- 全職員を対象とした「医療被ばく」に関する教育訓練が行われていない。
- 放射線関連機器の保守管理と点検記録が不十分である。
- 核医学検査では、実投与量によるガイドラインとの比較が行われていない。
東日本大震災に伴う福島原発事故以降、放射線被ばくに関する問い合わせや相談が増え、医療被ばくを含めた放射線被ばくについて、国民からの関心は高まっている。医療被ばくの適正化は、国民・患者に安心できる放射線診療を提供することとなる。今後、より多くの医療施設がこの医療被ばく低減施設認定を受審し、認定を受けることを希望している。(専門職 諸澄 邦彦)
(2013-11-22)