安全な医療機器を提供するために確実な日常点検の実施
(社)日本臨床工学技士会 常務理事 安全対策委員長 本間 崇
◇行動目標5a「輸液ポンプ・シリンジポンプの安全な操作と管理」
輸液ポンプ・シリンジポンプの事故発生過程をみると、輸液ポンプの設定・操作時の操作者の操作ミスが圧倒的に多く、確認不足や知識不足、失念がその要因となっています。
次いで、ポンプと関連した周辺機器の回路(ルート)やシリンジの操作ミス、ポンプ使用中の観察管理が多くなっています。
安全な機器を提供するには、機器の定期点検と使用前点検を欠かすことはできません。また、輸液ポンプ・シリンジポンプは、薬剤を微量注入する際や、一定の注入量を保つ必要のある際に使用されることから、事故事例の多くに薬剤が介在しています。使用される薬剤は麻薬や鎮静剤、循環器薬剤などであり、それらの薬剤はポンプの操作に誤りがなく、正しく患者の血管内へ注入されないと危険薬となります。これらの予防には、使用中点検が重要であり、確実に実施することが求められます。
◇行動目標5b「人工呼吸器の安全な操作と管理」
人工呼吸器関連事例では、「回路」、「操作・設定」、「電源」、「呼吸器本体」で有害事象が発生しております。これら発生要因の多くは、人工呼吸器の保守管理の不備と使用時の操作・設定等の確認不十分によるものであります。したがって、人工呼吸器関連の有害事象(医療事故)を防ぐためには、人工呼吸器の「使用前・後」と「使用中」の保守管理とヒューマンエラー誘因事項の確認を的確に実施することが必要となります。人工呼吸器を安全に使用するために医療者(医師、看護師、理学療法士、臨床工学技士など)は、保守点検により機器の状態を正常に保つことが必須であります。また、使用中の安全確保のためには、医師が指示する設定条件と人工呼吸器の警報が正しく設定され動作していることを監視することや、人工呼吸器の警報以外のモニタとして生体情報モニタを併用することにより、異常に対して迅速に対処できることが重要であります。