患者さんを意識し、取り組みをもっと積極的にPRしよう
国際医療福祉大学 医療福祉学部教授 丸木 一成
1999年の患者取り違え事故の例を出すまでもなく、病院が医療の安全対策に積極的に取り組んでいるかどうかは、病院選びの重要な指標になるはずである。読売新聞の長期連載企画「医療ルネサンス」のデスクを長く担当したが、残念ながら、患者の立場からみて、それがあまりよくわからない。何をもって医療安全に取り組んでいる病院といえるのか。むしろ、立派な最新鋭の機械がそろい、手術に長けた名医がいるなど、医療機能情報の公開が義務付けられたこともあって、こうした外からみてわかりやすい指標が、あたかもよい病院選びの指標のように思われがちだ。
そうした誤解を解く意味でも、「医療安全全国共同行動」は重要な意味を持つと思う。この共同行動に参加していることが、医療安全に積極的に取り組んでいることの証であるからだ。共同行動は、「もっと安全な医療のために!8つの行動目標」として、医療者と患者さんのパートナーシップで医療安全を実現しようと呼びかけている。ホームページも充実し、ポスターもできあがった。
共同行動に参加している病院は、来院した患者さんに、自分たちの取り組みをどのようにPRしているのだろうか。行動目標8では、患者・市民の医療参加をテーマにしているが、何も、目標8だけが患者さんに問いかけているのではない。危険薬の誤投与、肺塞栓予防、医療機器の安全な操作と管理、いずれも患者さんの協力なしには、成果をあげることは難しい。このような全国行動に参加している、意欲のある、良質な病院であることを、もっと積極的にPRすることこそ必要ではないだろうか。
行動目標8では、患者さんの間違いを防ぐためには、「フルネームで名前を」と呼びかけている。面倒がる患者さんにこのフルネーム確認の意味と重要性を説くことで、医療安全に真剣に取り組んでいる病院であることも理解してもらえば、そこには患者と医療者の信頼関係が生まれると思う。院内患者図書館も、転倒転落予防も、同様の意味がある。具体的なアドバイスは、ホームページの「Q&A」で示されているほか、「ハウツーガイド」や「支援ツール」として提供されている。医療崩壊、とりわけ病院崩壊が叫ばれて久しいが、国民の目が病院に向いている今こそ、各病院の地道な医療安全の努力と患者さんに向けての積極的なPRこそが、国民運動として盛り上げていくベースになると思う。