からだと病気を知るために -患者図書室のすすめ-(目標8)
東邦大学医学メディアセンター 司書次長 山口 直比古
患者図書室設置の目的は、インフォームドコンセントを支援することにあります。医師が患者に疾患、診断、治療などについて説明を行い、患者に理解していただくインフォームドコンセントにおいては、通常患者の側に情報が不足しがちです。また、患者は忙しい医師や医療従事者に尋ねることがなかなかできません。診断方法や治療方法について、患者が自己決定をするためには、医師の説明ばかりではなく、理解できる情報が、本や雑誌などの形で提供されることが望ましく、その情報資料を提供する場としての患者図書室が、病院内にあるとよいでしょう。病院内では、場所の確保は難しい問題です。しかしながら、狭くとも専用の場所を用意するか、あるいは、最近では外来待合いの一画(オープンスペース)に場所を提供している病院も増えてきています。
そこでは、情報提供の専門家である司書が、患者の知りたい情報を得るための手助けをすると、より一層効果的に診療の支援を行うことができます。患者図書室では、こうした人による支援が大切になるので、ボランティアを含めた人を確保することが必要です。
医学にかかわる情報は、常に新しいものを提供したいので、資料を購入するための予算は確保したいところです。最近では、患者や一般市民向けにやさしく書かれた医学書が多数出版されています。年間で30~50万円程度は用意したいところです。お金のかからない寄贈本にたよるのは、情報が偏る可能性があるので、できるだけ避けるべきでしょう。
病院内では、患者は緊張を強いられ、強いストレスを感じるものです。そのため、病院の雰囲気とは違う、ほっと一息つける場所が病院内にあるとよいかもしれません。患者図書室がその役割を果たすことができるよう設計することも可能でしょう。