救急カートの施錠は必要か?(目標1)

行動目標1:危険薬の誤投与防止支援チーム

 「行動目標1:危険薬の誤投与防止」支援チームに、登録病院から質問があり、メールで意見交換が行われましたので、その概要を報告させていただきます。
保健所による監査や医療機能評価機構の審査の際に、救急カートの施錠の必要性について指摘、指導されることがあります。
実際には監査や審査の担当者の考え方によっても温度差があるかもしれませんが、いざという時にかえって不都合が起こらないかと、対応に苦慮している病院もあるかと思います。

1)施錠すべきとする根拠について
・毒薬と劇薬を「薬事法」でみると、
(貯蔵及び陳列)第48条 業務上毒薬又は劇薬を取り扱う者は、これを他の物と区別して、貯蔵し、又は陳列しなければならない。
前項の場合において、毒薬を貯蔵し、又は陳列する場所には、かぎを施さなければならない。
・向精神薬を「麻薬及び向精神薬取締法施行規則」で見ると、
(保管等)第40条 向精神薬取扱者は、その所有する向精神薬を、その向精神薬営業所、病院等又は向精神薬試験研究施設内で保管しなければならない。
前項の保管は、当該向精神薬営業所、病院等又は向精神薬試験研究施設において、向精神薬に関する業務に従事する者が実地に盗難の防止につき必要な注意をする場合を除き、かぎをかけた設備内で行わなければならない。

2)対応する場合の基本について
上記法律で考えると、
・普通薬及び劇薬のみの保管であれば施錠の必要はない。
・毒薬を一緒に保管する場合は、施錠が必要。
・向精神薬は、施錠をするか、業務に従事する者が実地に盗難の防止につき必要な注意をする(ナースステーション内の職員がよく見える場所に置く等)かのいずれかが必要。

3)現実的運用について
・救急カートの院内標準化を進める際には、救急カートに入れる薬剤を上記の基本的事項を考慮して選定することも重要と思われます。
・どうしても毒薬(筋弛緩剤等)や向精神薬(ジアゼパム等)を準備しておきたい場合には、それだけを別扱いにして、その部署の定数配置薬として鍵付き金庫に保管しておくという対応もよいと思われます。
・施錠しない場合でも、救急カート内の定期的チェックのみならず、引き出しを紙テープで封印するなどして、使用状況をしっかり管理することが推奨されます。