経験知をシェアし、知恵を出し合おう(EBM)

筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター 徳田 安春

photo 今回の医療安全全国共同行動の行動目標は、有害事象に関する5つの行動目標と医療安全の組織基盤強化に関する3つの行動目標からなります。共同行動がスタートする前に、わたしたちEBMチームは、これらの行動目標に含まれる具体的な推奨項目についてエビデンス・レビューを行いました。これらのレビューにあたり我々は、わが国の国内学会や米国等の諸外国における国立機関や学会等が発行した診療ガイドライン等も参考にしました。

 一般に、予防的介入の効果を検討するためには、コホート研究や症例対照研究などの研究デザイン手法に比べて、ランダム化比較試験Randomized Controlled Trial (RCT)の信頼性が高いといわれています。しかしながら、今回の推奨項目のなかには、RCTが存在しないものもあり、その場合にはできるだけ、非ランダム化比較研究や観察研究などで重要な論文を抽出選択し、その内容を吟味するように努めました。実際、医療安全領域の予防的介入については、現実的にRCTを施行することが困難なものが多く、RCTがなくてもその有効性は総合的な判断からみて十分あると判断されるという状況があるとされております。

 経験知をフルに活用してPDCAサイクルを回すという発想は、もともと企業活動における安全性と生産性の改善プロセスにその由来があります。医療現場はリスクに満ちた複雑系生命体といわれています。複雑系理論では、ある介入を実行した場合には、予期せぬ結果unintended consequenceの発生が認められることがあるといわれています。参加病院において、みなさんが具体的な推奨項目を実行したときに、もし予期せぬ結果unintended consequenceの発生がありましたら、ぜひ医療安全全国共同行動事務局までご一報ください。そのような経験知を参加病院間でシェアしながら、これらに対する改善案について知恵を出し合うことが全国の病院での医療安全の向上に重要であると考えます。