高濃度カリウム塩注射剤について(目標1)
武蔵野赤十字病院 矢野 真
高濃度カリウム塩注射剤の取り扱いは、病院としての医療安全の取り組みの試金石になると考えています。すでに多くの団体から提言や具体的な対策が提案されており、自院で深刻な事例が発生していないからといって、何の取り組みもされていないといったことは、少なくとも医療安全全国共同行動に参加している病院ではないと思います。しかし、すでに対策済みということで、PDCAサイクルを回していないこともあるかもしれませんので、見直しをお願いいたします。現状維持は後退であるという見方もあるそうです。
いくつかの点検ポイントを列挙します。
■塩化カリウムだけでなく、アスパラギン酸カリウムやリン酸2カリウムなども対象にしていますか。すべて高濃度カリウム塩注射剤です。
■病棟配置はしていなくとも、アンプル型の高濃度カリウム塩注射剤をそのまま病棟に上げていませんか。急速静注事故が起きる可能性があります。その場合、注意喚起をするリマインダーを付けていますか。ただし、注意喚起にも限界があります。ナースステーションでシリンジに吸う時には理解していてもベッドサイドで忘れてしまうこともあります。エラープルーフが考慮されたプレフィルド型シリンジ製剤の採用も有用です。
■職員教育は新人ナースだけということはありませんか。ベテランナースや研修医は対象にしていますか。残量の少ない点滴ボトルにKCLを混注することは危険だと誰もが認識していますか。結果的に急速静注と同じようなことになります。
■特定の診療科や部署に特例を設けていませんか。その場合、特別の安全対策を講じていますか。また、特例の見直しは行っていますか。
医療安全管理者の常識は、まだ、医療者全体の常識とはなっていません。思わぬ落とし穴がないかどうか、もう一度点検をしてください。