行動目標1に取り組むにあたって
行動目標1支援チーム
東北大学病院薬剤部 我妻 恭行
行動目標1「危険薬の誤投与防止対策」は、4つの推奨対策と12のチャレンジ項目からなります。これらの危険薬誤投与防止対策のいくつかを実施することにより、薬剤を安全に使用できる仕組みを作りあげることを目的としています。
対策に取り組むにあたっては、まず、自分の施設の院内採用薬について危険薬のリストアップをすることから始めてください。共同行動で提供している「How to Guide」には危険薬とすべき薬剤群として、注射用カテコラミン、テオフィリン製剤、高濃度カリウム塩注射剤などの20項目を挙げていますが、必ずしもこの20項目にこだわる必要はありません。施設の事情や考え方に応じて危険薬の範囲を変えてかまいません。ただし、今回のキャンペーンでは、高濃度カリウム塩注射剤、高張食塩水注射剤、麻酔用筋弛緩薬は必ず危険薬として登録し、これらを安全に使用する体制作りを検討してください。
この中で高張食塩水注射剤(例:10%食塩注等)については、「10%食塩注がなぜ危険薬なのか?」「なぜ病棟配置禁止なのか?」という問い合わせが共同行動事務局に時々寄せられます。その理由を以下に解説します。高張食塩注に関する医療事故の多くはブドウ糖液との取り違えです(例:10%ブドウ糖液<->10%塩化ナトリウム注)。高張食塩注の取り違え事故の中には、高ナトリウム血症あるいはその合併症により結果的に死亡を含めた重大事故になったものも報告されています。また、現在市販されている10%塩化ナトリウム注20mLはプラスチックアンプル入りですので、ブドウ糖液20mL、生理食塩液20mL、硫酸マグネシウム注20mL等などの他の20mLプラスチックアンプル入り製剤と外観が酷似しており、相互の取り違えの危険性が増大しています。一方で、高張食塩注は病棟などでは緊急で使用することはあまりないことから、共同行動では高張食塩注の病棟配置禁止を推奨しています。