VAPは減らすことができます(目標4)

行動目標4支援チーム
秋田大学大学院医学系研究科 救急集中治療医学講座 多治見 公高

photo ICU入室患者の多くは、尿道カテーテル、中心静脈カテーテル、気管内チューブが挿入留置されています。それらディバイスが原因の院内感染として、尿路感染(urinary tract infection: UTI)、血流感染(catheter-related blood stream infection: CRBSI)、人工呼吸器関連肺炎(ventilator associated pneumonia: VAP)を起こすリスクがあります。いろいろな報告で最も頻度が高いのはVAPです。
VAPの感染経路は外因感染と内因感染があります。起因菌が体の外から肺に侵入した場合が外因感染で、体内にいる菌が肺に侵入した場合が内因感染です。外因感染は気管内チューブの内側、内因感染は外側から肺への侵入です。内因感染は体内の常在菌により引き起こされる一次性内因感染と、新たに口腔内あるいは上部消化管内にコロニー形成された菌による二次性内因感染に分けられます。
感染経路により予防策は異なります。外因感染の予防は①気管吸引施行時の標準予防策の遵守、②人工呼吸器回路内の汚染対策です。内因感染の予防は、①口腔内と上部消化管内のコロニー形成予防、②胃内容物の口腔への逆流予防です。また、人工呼吸器装着期間が長いとVAPのリスクは高くなります。適切な鎮静剤の使用で早期の離脱を図り、人工呼吸器装着期間を短縮することがVAPを減らすことに繋がります。
VAPバンドルケア(VAP bundle care)なのか人工呼吸器バンドルケア(ventilator bundle care)なのか多少混乱があるようです。それはどちらでもよいのです。人工呼吸器装着患者によいと考えられることを束にして確実にチームで実施することでVAPを減らすことができます(1) 。日本集中治療医学会が策定したバンドル (2)を参考にして、VAPの合併をなくしましょう。

(1) Resar R, Pronovost P, Haraden C, et al.
Using a bundle approach to improve ventilator care processes and reduce ventilator-associated pneumonia. Joint Commission J. on Quality and Patient Safety. 2005; 31: 243 – 248.
(2) http://www.jsicm.org/pdf/jinkou_an.pdf