目標3[危険手技の安全な実施] Q&A
中心静脈カテーテルについて(2010/09/20 追加)
Q.適応の厳格化はできますか?
A.院内全体への掛け声で、ただ「CVCの適応を厳格化しましょう」と呼びかけても効果はないと思います。具体的に各診療科、各病棟に入り込んで実態としてのCVCの現状を知り、パスなどの変更を含んだ疾患への取り組みから議論したうえで、不必要なCVCであれば他の方法を選ぶというような段取りがないと、適応の厳格化は実現が難しいと思います。
Q.医師によって手技、使用する機器、材料が違うため、同じ診療科でも統一することが難しいのですが。
A.安全のための手技統一化と、それに伴う研修会の設定というやり方もあると思いますし、材料選定の病院内の方針(たとえば同一目的の資材は一本化する、種類を増やす時は一増一減の原則とするなど)の経営側の切り口で責める方法もあると思います。
Q.抜去日の確認方法は?
A.毎日の看護業務にカテーテル、ドレーンの確認作業があるのであれば、それを用いる方法があると思います。また、CVCに特化したデータとして集約していくのであれば、共同行動で提案しているCVC調査票などを用いることや、電子カルテを使用している病院では、カテーテル管理の画面などで抜去日を集計できるようにしたり、その理由についてチェックできるようにすることも可能かと思います。
*CVC調査票:「8つの行動目標と推奨する対策」→目標3b→TOOL BOX→登録のうえ、お入りください
Q.エキスパート認定基準をどう考えますか?
A.東京医科大学や杏林大学の例を参考に各病院の事情を踏まえて基準を決められるのがよいかと思います。
Q.医師によってはCVC対象が多く、適応不明で困っています。また、安全なセデーション管理について教えてください。
A.実際にどのような対象を適応としているのか実態を知る意味でもCVC調査票の実施をお勧めします。セデーションに関しては、この共同行動でのご提案はありませんので、然るべき成書等をご参考に願います。
Q.リスク評価表を電子カルテに載せようかと考えていますが、対象者をどの範囲にすべきでしょうか?
A.リスク表に関してもハウツーガイド内でご提案させていただいておりますので、参考にしていただければと思います。
*ハウツーガイド:「8つの行動目標と推奨する対策」→目標3b→ハウツーガイド→登録のうえ、お入りください
Q.CVCのマニュアルがなかなかできません。
A.マニュアル自体の各病院の独自性にこだわる必要はなく、世の中にたくさん存在するマニュアルを利用して、各病院ごとの配慮をするということで目的は達成することができると思います。マニュアルを作ることよりも、それをいかに徹底するかにエネルギーを費やすほうが良いのではないでしょうか。マニュアル作りはともすれば完成するとそれで終わりになってしまいがちですから。
Q.研修会の講師、特にエコーガイド下での穿刺を指導できる講師がいません。
A.どこの病院でも最初はエコーガイドを得意とする医師はいないと思います。日本シャーウッドに講師を紹介してもらうなり、日本病院評価機構などで行われている研修会に参加することで講師を育成する必要があるかもしれません。
Q.インストラクター制度、教育制度の院内統一がなかなかできません。
A.病院長や医療安全管理者の権限で責任者を指名して体制の構築を指示されることが始まりと思います。
Q.超音波ガイド下セルジンガー法の手技を中心にマニュアルを改正する方向で検討中ですが、超音波の器械購入が許可に時間がかかり、なかなかマニュアルの改正が進みません。
A.超音波器械は高価でありますが、超音波を使用しないで合併症を起こした時のコストを念頭におきつつ、病院の財政事情でご判断いただくしかないと思います。
Q.上司(医師)がCVCガイドライン作成、教育の統一について積極的ではないので、年間目標に掲げましたが、なかなか取り組めないでいます。医師の協力なしにはできませんが、協力を要請しても自信がないようで、要になる医師の選出も困難な状況です。
A.もともとある程度一般的になってしまった感のあるCVCですので、その専門家であるという意識をもつ医師は少ないと思います。自ら手を上げる医師も少ないと思いますので、やはり病院長や医療安全に関する責任者が指名してその医師を育てるくらいの気持ちで支援する体制は必要と思います。
Q.MBPが浸透しません。
A.MBPの普及は、医師に促すだけでなく、病院全体の決まりとして介助する看護師への徹底も必要と思いますし、看護師の理解の中でMBP必須となれば医師も従うことがあります。
Q.多数回穿刺が行われています。
A.多数回穿刺に関しては文献的根拠を示して危険性を広めることが必要と思いますが、これも介助する看護師とともに共通理解として3回ルールを広めるのが良いかと思います。「スリーアウトチェンジ!」の合言葉もご利用ください。
Q.エコー下、透視下でのCVC挿入に関して。エコーの器械が1台しかなく、レントゲンの器械も不足しています。
A.機材の問題に関しては、需要のチェックと順番作りなどの体制を病院全体としてご検討いただき、あとは各病院の財政事情でご判断ください。
Q.チームとしてケアできていません。
A.医療安全は努力すれば成果が出るのだということを可視化していく努力をすることで、やりがいのあるチーム活動につながると思いますので、なにか可視化できる数値を見つけると良いと思います。そのためにもCVC調査票はなにかお役に立てると思いますのでご検討ください。
Q.指針作成、見直し修正、研修医教育、事例収集等実施していますが、問題発見、解決するしくみがありません。
A.問題抽出はもっとも大事な行程と思います。そのためにCVC調査票をどうぞご利用ください。
Q.カルテ記録が不十分です(テンプレートがない:電子カルテ上)。認定医登録不十分、またCVC挿入に伴うインシデント報告も不十分です。
A.電子カルテ上にもCVC調査票のような項目が追加できるのであればご検討いただくのは意味があるかと思います。もちろんそれが集計可能な形での入力が望ましいと思います。
Q.1時間も2時間もかけてCVCが入らなかったり、医師自身が時間をかけることでのリスクを知らなかったりします。しかし看護師からリスクを伝えると、かえって意地になる医師もいますし、患者さんの前で伝えることで不安を増強させることにもなるので、どうしたらよいのか困ることがあります。
A.ぜひ3回ルールの院内全体への浸透を図ることをお勧めします。ポスターを作ってCVC穿刺を行う場所に貼付したり、院内広報誌などでのアナウンスなど、特に医師に対しては文献的な後押しがあると説得力が増すと思います。ハウツーガイドに文献も含めて多数回穿刺の危険性につき記載しておりますのでご利用ください。
Q.セルジンガー法への統一をはかりたいのですが、医師の協力が得にくい状況です(熱心に協力してくれる上級医の存在が必要です)
A.セルジンガー法への統一などはこれまで他の方法で行っていた熟練医師に強要することはなかなか難しいことも多いと思います。自らその方法の優位性が判断できるような状況でないかぎり、なかなか従ってはくれないと思います。ハウツーガイドもご利用ください。また上司を説得することにエネルギーを費やすよりも、研修医など若い世代の医師に安全手技をきちんと普及することにエネルギーを注ぐほうが病院全体の安全手技普及につながる場合も多いのではないかとも思っております。
Q.ヘパリン生食が感染のリスクになるとして院内での使用禁止になりました。入浴時、離床時には生食ロックを行っていますが、血栓→感染のリスクにならないのか心配です。
A.適切な生食ロックを心がけていただくことと、ヘパリン生食ロックが感染源になるのは、ヘパリン製剤バイアル自体の使用方法や作成したヘパリン生食の使いまわしの問題であると思いますので、もしどうしてもヘパリンがないために血栓が増えるのであれば、プレフィルドシリンジなどの使用も検討の範囲に入るのではないかと思います。
Q.クローズルート(キャップを外したり付けたりを避け)を進めたほうがいいのでしょうか。
A.三方活栓の使用は感染のリスクを増やしますので、クローズドルートは進めたほうが良いと思います。
Q.高齢な患者さんが対象の病院のため、感染が致命的になりえます。また、病院自体が認知メイン→医療療養型病床へと変更してきており、安全でエビデンスに基づいた方法を導入するチャンスだと考えているので、具体的なエビデンスやガイドラインを知る機会やHP等があればぜひ教えてください。
A.ハウツーガイドをぜひご利用ください。
Q.当院ではこれから取り組むところなので、指導者をいかに育成するかが問題だと思います。院内の別のセミナーが必要なのか、院外の公的な機関が必要なのか、そのために利用できる制度があれば教えてください。
A.他院の見学も可能でしょうし、徳嶺譲芳先生(http://www010.upp.so-net.ne.jp/ultrasound-CVC/echoguide.html)に講師をお願いする手もあります。また日本病院評価機構でも研修会を企画していますので、ご利用になるのも手かと思います。
Q.CVC挿入部の剃毛はしたほうがよいですか?
A.問題となるのは鼠径部の際でしょうが、穿刺手技と固定に邪魔になる分の最小限の剃毛は必要になることが多いのではないかと思います。いずれにしろ大腿静脈は感染の危険が高く避けられるのであれば避けたい部位ではありますが。
経鼻栄養チューブについて(2010/06/02 追加)
Q.経鼻チューブ挿入の確認は2人の看護師で気泡音を聴診し、ダブルチェックすることを院内のマニュアルにしています。2人で確認するのはよいことですか?
A.チューブが気管や肺、食道に入っていても気泡音が聴診できます。2人で聴いて確認しても誤挿入を防ぐことは困難です。これを機会にマニュアルの改訂を薦めます。
Q.胃内溶液が引けない場合はどのようにしたらよいですか?
A.挿入チューブが胃底に達していない場合があります。チューブの長さを5~10cmくらい進めましょう。また、挿入前には患者の実測値を測定(鼻孔より咽頭を経て、噴門部までの長さ+胃内への挿入の長さ)し、チューブにマーキングをするなど、適切なチューブの長さを挿入することで胃液を引くことができます。初回挿入後の最終の確認はレントゲン撮影で確認することを薦めます。
Q.リトマス紙ではいけませんか? また、pH試験紙はどうしたら手に入りますか?
A.リトマス紙は酸性、アルカリ性の判定だけしかできず、正しい判定はできません、pH試験紙は5.5の判定がわかりやすい領域のものを使用します。院内の検査室の技師、またチューブを購入しているメーカーに相談すると手に入りやすいです。
Q.ハイリスクでない患者の場合のチューブの挿入確認方法はどうしますか?
A.ハイリスクでない患者の場合は気泡音の聴取以外の確認方法と、複合的な判断を取り入れるマニュアルを作成、実施記録を残しましょう。
Q.栄養剤注入直前の確認も毎回pH測定をしたほうがよいですか?
A.挿入時にレントゲンで位置の確認ができていれば、注入直前の確認はチューブのマーキングの位置、口腔内のチューブのたわみと位置の確認でよいと考えます。しかし患者の状態が不穏やチューブの抜去歴がある場合はこの限りではありません。
Q.制酸剤服用の患者の挿入確認ではpH測定値をどうしたらよいですか?
A.制酸剤服用の患者の挿入確認はレントゲンで確認することを薦めます。
Q.経鼻栄養チューブからの胃液確認のためのpH試験紙について、事務局から無償で提供していただくことも可能だとのお話がありました。詳細をお教えください。
Q.胃液のpH試験紙の商品名を具体的にご教授願えたら幸いです。
Q.PHを測定する検査試験紙を取り寄せたところ、5.5の表示がなく意気消沈してしまいました。そこでハウツーガイドで推奨されている検査試験紙を購入したいと考えていますので、ご教示よろしくお願いいたします。
A.pH試験紙の試供について取り急ぎ、JMSの方に手配していただきますのでお待ちください。また他の試験紙は貴施設の検査室等で使用されているものがありましたら、試しに使用されてもよいかと思いますが、他の製品もご紹介します。
≪pH試験紙のご案内≫市販されている試験紙は、①アズワン PEHANON ストラップ pH試験紙 MN90416 ②アドバンテック pH試験紙(NO.20)5.0~8.0 ブックタイプ 200枚 ③メルク pH試験紙ニュートラリット 9564-1M ロールタイプ ④日本ケミカル 尿pHテストU 100枚 ⑤テルモ ウリエースPC JA-l03P 100枚
なお、共同行動参加の病院で使用される場合は下記の試験紙も無料で試供できます。
JMSpHチェッカー5.5
Q.栄養チューブの位置確認をpH測定方法で始めました。pH試験紙はもともとpH0-14かpH1-14、2刻みのロールタイプを使っていましたが、4から7まで境界がはっきりせず、位置確認の基準の5.5と6が判別できません。判別しやすい製品を教えてください。
A.pH試験紙のロールタイプは経済的でよいのですが、判定範囲の幅が広いのが難点です。国産のものとして、JMSのスティックタイプ(JMSpHチェッカー5.5)があります。共同行動参加の病院で使用される場合は無料で試供できます。
Q.食紅を使った確認方法について教えてください。
A.食紅を使った確認を試みたのは九州地区の一病院です。胃ろう交換のときに「インジコ」という薬品を入れてブルーに色付けをするという方法の原理を応用して工夫したものです。手順の概要は次のとおりです。チューブを交換する直前に水で溶解した食紅液を30~50mlくらいを注入し、チューブを抜く。次に新しいチューブを挿入し、食紅が引けることで胃内の挿入を確認する。担当者によると「食紅の手配や濃度は栄養士と相談して購入し、薄めてもらって使っています」とのことです。NSTのチームのある病院でしたらNSTで相談されるとよいでしょう。一概に決定した内容ではないので、それぞれの病院で工夫されての確認法と思います。もちろん患者さんやご家族に説明してから実施されたほうがよいと思いますし、院内でコンセンサスを得てください。
Q.ワークショップで展示されていたシュミレーターは入手できますか?
A.一台は日本シャ-ウッド社所有のオーダーによるもの、もう一台は日本ライトサービス株式会社の210331「経鼻胃管チューブマネキン」(262.500円)です。どちらも相談のうえ、貸出してくださいます。