2周年記念フォーラム報告

ワークショップ報告

分科会A:中小規模病院の医療安全対策(行動目標1-8共通)

photo 平成22年5月15日(土)、ベルサール九段イベントホールを会場に、医療安全全国共同行動“いのちをまもるパートナーズ”2周年フォーラムが開催され、その中の一つとして、「中小規模病院の医療安全対策」をテーマにワークショップ(分科会)を開催しました。フォーラム前半のシンポジウムに引き続き、初めての試みとしてインターネットでのLIVE中継という方法を取り入れ、全国各地の地域の病院の方々にも電子メールでの質問コーナーを設け、全国からLIVE参加していただくことにしました。

1. テーマを「中小規模病院の医療安全対策」とした趣旨を説明しました。医療安全全国共同行動の行動目標1から8について、各目標から推奨する対策を「How To Guide」などに提示し活動を進めてきましたが、推奨する対策の内容が大きな病院を対象とするもので、中小規模病院では難しいとの声が聞かれました。また、参加の手上げはしたものの、いろいろな課題があり進めていけないというリスクマネジャーや担当者の悩みもあり、各地のフォーラム等のアンケートでは「成功事例を紹介してほしい」「支援をもらうにはどうしたらよいか」など要望や質問が多く寄せられました。そこでこのワークショップAでは、中小規模病院が医療安全対策を進めていく際の課題を明らかにし、中小規模病院の事情に合わせた行動目標の達成方法、推進対策や工夫など、実現しやすいことを提案していくことを目的としました。

photo2. 趣旨説明の後、中小規模病院の医療安全確保のための研究を実施してこられた東京都看護協会会長の嶋森好子先生に、基調講演として「中小規模病院の医療安全対策」と題して講演をいただき、中小規模病院で行っている安全対策を実例とともに紹介していただきました。

3.次に、実際に行動目標達成に取り組む中小規模病院として、岩国医療センター医師会病院のリスクマネジャー、安永彰子先生に「改善活動による医療機器安全管理(目標5)の取り組み」と題して、QCサークル活動の改善手法を活用して医療機器の安全管理に取り組み、標準化を定着させていった事例を報告していただきました。

4.「Q&A」として、インターネットを通して中小病院の医療安全に関する質問や助言、取り組み事例の紹介などをメールでお寄せいただくことにしました。回答者・助言者には、行動目標1~8の支援病院などからアドバイザーの先生方、講演をしていただいた嶋森先生、事例報告をしていただいた安永先生にも加わっていただきました。

質問1:行動目標8に参加して1年になる。名前を名乗っていただく活動を行い、しっかり定着してきたかのように思っていたところ、立て続けに患者誤認のインシデントが発生した。継続して意識を高めて取り組んでいくための良い方策を教授していただきたい。
この質問に対して安永先生から、「患者誤認ゼロ」の目標を立てて各部署で取り組みを行い、広報紙を活用して注意喚起し、結果は年末に評価するという自院での取り組みを紹介していただきました。

質問2:中小病院では専従の安全管理者を置くことが難しいが、専従でない安全管理者の活動で医療安全加算が取れる活動の方法があれば紹介いただきたい。
この質問には、嶋森先生から「医療安全管理者が活動しているという要件は何か、アウトカムは何で評価するか、それらを明らかにするデータが必要になってくる。この共同行動を通して医療安全対策を行っているというデータを作り、証明していくことも必要になってくるのではないか」という回答をいただきました。

質問3:医療安全教育のための講師派遣費用の負担をどう解決したらよいか。
この質問には、西宮中央病院院長の左近先生と東北大学病院の医療安全管理准教授の藤盛先生から「地域の有力な先生方に声がけして協力していただくとよい」「県や郡医師会などへ、自院で安全教育を行いたい旨を伝えておくと、バックアップしてくれる」「メーカーへ協力を求めるのも一つの方法」とのアドバイスをいただきました。

質問4:目標6「急変時の迅速対応」の推奨対策に掲げられている「院内救急計画の策定と体制づくり」では、医師が少ない中小病院では難しく、どのように進めたらよいか悩んでいる。
この質問に対しては、聖マリアンナ病院救急部の藤谷先生から「医師のマンパワーの問題があるので、他の職種を巻き込んでチームを作って取り組むシステムをつくること。医師のいない夜間の対応として、核になる看護師にBLSをしっかり教育し、そのリーダーを中心に一次的な救急処置をやっていけるようなシステムをつくる」などのアドバイスをいただきました。

photo5.最後にグループ討議を行いました。中小規模病院の行動目標1~8の安全対策について、「難しい点はあるが自分たちで工夫できること」「地域中隔病院や域内協力ができるとよいこと」という二つの観点から、困っていることとその解決策や提案について、情報交換、意見交換をすることを目的としました。
テーマは、
①専従のRMがいない施設でのインシデント・アクシデントの分析・対策の立案
②臨床工学士がいない施設での医療機器の安全管理と職員教育
③中小規模病院のコード・ブルーを含む院内救急体制
④地域の支援病院としての域内病院等の支援のあり方
⑤コンピューター・オーダリングシステム未導入の施設での投薬治療の安全管理
以上の5つのテーマについて、8グループ(52名)で討議を行いました。

〈討議のまとめと提言〉
グループ討議の中から「院長など経営者・管理者向けの研修を開催してほしい」「大きな病院が中小規模病院を支援する仕組みをつくる必要があるが、具体的にどのような仕組み作ることが可能であるかが課題」といった意見が出されました。
討議のまとめとして、「病院トップの理解と支援があればRMが中心となって動き出すことができる。行政には、域内の中小規模病院職員の研修会の開催や、域内ネットワーク作り、仕組み作りに取り組んでいただくと、中小規模病院も参加しやすくなる。また、講師や教材の提供やサポートをしてもらえるシステムの構築していただき、中小規模病院用のHow To Guideを提案していただければ、いろいろな病院が活用していけるのではないか」等、提言させていただきました。

 初めてインターネットを活用してのLIVEという形でのワークショップでしたが、遠くの地域で参加してくださった方から「会場に参加しているように著名な先生方の講演や、意見が聞けてよかった。院内の医療安全に関わる職員をもっと参加させて院内研修としても活用できるのではないか」とのご意見もいただきました。
 会場に参加してくださった皆様、インターネットで参加してくださった皆様、ご協力いただいた関係者の皆様に感謝申し上げます。

文責 渡邊和子(栗原市立栗原中央病院 総看護師長)